08. 絆 −二人の静かな愛−
「永泉さん」
あかねは、自分の目の前に居る永泉の名を呼んだ。
「神子・・・」
その呼びかけに永泉は答えた。
「もう、行かれてしまうのですか」
永泉は、少し悲しげに話した。
「・・・はい」
その問いに、少し無言になってからあかねは答えた。
「・・・・・」
しかし・・・あかねの返事の後、二人の間には沈黙が広がってしまった。
「・・・・・」
沈黙はさらに続く・・・
そんな今日は、二人の別れの日であった。
「寂しいです」
あかねは、呟きながら泣いてしまった。
「泣かないで下さい・・・これが永遠の別れではないのですから」
永泉は、彼女の手をそっと包み込みながら話す。
そんな彼の表情も、涙がこぼれ落ちそうな程に悲しげになっていた。
「そうですよね」
あかねは涙を衣の袖で拭って、顔を上げる。
彼女は今日、現代へ帰ってしまうのだ・・・・・
「また、会いましょう」
あかねは涙を堪えながらの笑顔で、永泉に別れを告げる。
「はい」
永泉は、ただそれだけの言葉で答えた。
「それじゃあ・・・私、行きます」
あかねは永泉に背を向け、歩きだした。
「・・・・・」
そんな彼女の背中を見つめ無言になる永泉。
「・・・・・」
無言のままだったその時・・・・・
永泉は去り行くあかねの背に向かい、そっと呟くように言った。
「あかね」
彼女の名を呼ぶその力強い声は、再会を信じていた。
たとえどんなに遠く離れたとしても、二人は結ばれている。
二人には、とても強い絆があるから・・・・・
だから、また再会する日まで・・・待ち続ける事が出来る。
【完】
ああ・・・悲恋っぽくなってしまいました〜。
多分再会できると思います。いや必ず再会します(041113)