14. 弱気 −精一杯の告白−
それは、冷たい風が吹く・・・冬のある日。
「・・・・・」
言葉もでないほどの寒さで永泉は黙ったまま、一人歩いていた。
「・・・神子」
その時だった、永泉の目の前にあかねの姿があった。
「永泉さん」
あかねは永泉の呼び掛けに気がつき、彼の名を呼びながら駆け寄って来た。
「御一人で、どうされたのですか?」
永泉は、あかねに尋ねた。
「急に、京の町を一人で歩きたくなったんです」
そう、あかねは笑顔で答えた。
「永泉さんはどうしたんですか?」
あかねは、逆に永泉に尋ねた。
「い、いえ・・・私は・・・」
永泉はその問いに戸惑って、言葉が消えてしまった。
「・・・・・」
そのまま黙った永泉に、あかねもどうしていいか分からず黙ってしまう。
「あ、あの・・・」
先に言葉を発したのは、沈黙を作ってしまった永泉の方だった。
「み、神子にお話がありまして・・・」
永泉は意を決した様に、話を始めた。
「あなたに会ってから、私は・・・」
意を決したとはいえ、中々言葉にならなかった。
「私は、少し変わった気がします」
あかねをまっすぐに見つめながら言った。
「だから・・・だから私は・・・」
そのまま永泉は、また黙ってしまった。
「・・・永泉さん?」
あかねは、永泉のその様子に困惑してしまった。
「神子・・・なんでもないんです」
永泉は、何も無かったかの様に話を止めた。
「・・・今日は、とても寒いですね」
永泉は冷たい空を見上げて、そう言った。
「そうですね」
あかねは突然と話題が変わった事に戸惑いながらも、普通に答えた。
「神子・・・」
永泉は、そっと彼女を呼んだ。
「なんですか・・・?」
その時の永泉の顔は、少し悲しげに笑っている様に見えた。
「本当に寒いですね」
そう言って永泉はあかねの冷えた手を、自分の手でそっと包み込んだ。
「あったかい・・・」
あかねは、満面の笑みで永泉に微笑みかける。
「神子、どうか私を・・・ずっとあなたの側に居させて下さい」
永泉は、包み込んだあかねの手を少し力強く握って言った。
【完】
弱気なので・・・結局、告白は出来ないみたいなのを目指しました。
最後の言葉が彼の精一杯。と私なりに考えました(041222)