18. 最後の夜 −愛しき涙−




「おいで」


友雅はあかねの手をそっと握り、自分の側へと引き寄せた。


「友雅さん」


あかねは引き寄せられるまま、友雅の体に抱きつく。


「どうしてこんな・・・」


あかねは瞳から大粒の涙を零して、そう言った。


「仕方が無いんだよ」


泣いて自分の胸に縋るあかねに、友雅は答えた。
その姿は、とても悲しげであった・・・・・


「でも・・・」


あかねは、さらに強く友雅に抱きついた。


「・・・・・」


そんな彼女に、友雅は言葉を返せなかった。
ただ・・・ただ、強き抱きしめる事しか出来ない・・・


「友雅さん」


あかねは、友雅の顔を見上げる。


「私、もう・・・」


溢れゆく涙を必死で堪えて、友雅の元から離れようとする。


「あかね」


友雅は、離れていこうとしたあかねの腕を強く掴んだ。


「これが、本当の別れではない」


そう言って、あかねの頬にそっと触れる。


「君の涙も・・・」
「えっ・・・?」
「涙も、全て愛しいよ」


あかねの頬に伝う涙を、友雅は優しい口づけで拭う。


「友雅さん・・・」


頬に触れていた唇は、いつのまにかあかねの口元へと近づいていた。


「愛しているよ、あかね」


友雅は、あかねの体をそっと倒した・・・・・










――― そんな夜が明けた次の日の朝・・・あかねの姿は京から消えた。


【完】






はい。いなくなってしまいました・・・あかねちゃん。
この後どうなったのかは、読み手さんのご想像にお任せします(050122)
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