26. 黒髪 −私の憧れ−
彼は、黒くて長い髪をした女の人が好き・・・・・
そんな話を、何処かで聞いた時はとても驚いた。
驚きすぎて、いつ聞いたかも覚えていない。
「私の髪は、短い・・・」
伸ばせばいい・・・のかな?
でも、私の髪は・・・
「私の髪は、黒髪じゃない」
駄目・・・もう、決定的だ。
私じゃ、あの人に好きになってもらえない・・・・・
「どうされたのですか?」
悩んでいた私に、女房さんが声をかけて来た。
「い、いえ・・・何でもないんです」
私は、精一杯の笑顔で答えた。
女房さんは、少し疑問を残したような顔で去っていた。
「はあ・・・」
私は大きなため息をつく。
「あの女房さんみたいな髪だといいのに」
憧れてしまう・・・長くて、すごく綺麗な黒髪だから。
「はあ・・・」
私はまた、大きなため息をついた。
「どうしたんだい?」
私の背の方から、さっきとは違う・・・男の人の声がした。
「と、友雅さん・・・」
私は、驚いて・・・声を上げた。
「やはり、元気がないようだね」
友雅さんは、私の顔をじっと見つめてそう言った。
「君の女房も、元気がないようだと心配していたよ」
ああ・・・みんな、気がついてるみたい。
「あの・・・少し悩んでる事があって・・・」
私は、勇気をだして言ってみる。
「なんだい?」
「・・・友雅さんが、黒髪の女の人が好きって聞いて」
言っては見たものの、言葉にしただけで悲しくなった。
だから私は、下を向いた・・・・・
「そんな事を言った覚えはないけどね・・・」
「えっ・・・?」
そんな、本当の話だと思ってたのに・・・。
「私じゃ、好きになってもらえないのかと思って・・・」
ずっと、悩んでいたのに・・・・・
「君は、私のことが好きだったのかい?」
え?・・・私ったら今、口にしてしまった?
「そうだったのか。でも心配する事はないよ・・・」
口にしてしまった自分に驚く私に、友雅さんは言った。
「私も君が好きなのだから」
驚いたのと、嬉しいのと・・・いろんな気持ちが混ざり合って涙が零れた。
「本当だよ」
友雅さんはそう言って、指先で私の涙を拭ってくれた。
ああ。私一人で悩んで・・・馬鹿みたいだったな・・・・・
【完】
あかねちゃんが一人で悩んで、語ってる・・・。
そんな話になってしまいました。読みにくいよな・・・こういうの(050326)