この世には、相反するものは沢山ある。
天と地、昼と夜、動と静、明と暗。
そして・・・男と女・・・・・
28. 陰陽 −相反するもの−
「本当に良いお天気ですね」
京の町を、二人の男女が歩きながら話している。
暖かな春の日差しが、とても心地好い・・・そんな日だ。
「そうですね」
何気ない会話を続けながら、町を進んで行く。
「神子、今日はありがとうございました」
永泉は礼を言って、あかねを送り届ける。
いつのまにか二人は、藤姫の屋敷に着いていたのだ。
「あ、あの・・・」
永泉が何かを言いかけた。
彼の表情が、急に真剣な物へと変わっていく。
「なんですか?」
あかねは永泉の真剣な眼差しに驚きつつも、笑顔で答える。
「お話があるのです・・・」
永泉はあかねの瞳を真っ直ぐに見つめながら言った。
けれど、照れからなのか・・・すぐに視線を反らした。
「永泉さん?」
先程までとは違う永泉の姿に、あかねは戸惑う。
そして、心配そうに永泉の顔をじっと見つめた・・・
「私は時々、考えるんです」
永泉は自分の気持ちを話し始めた。
「私は陽で、あなたは陰・・・」
永泉の言いたい事は何となく分かるような気もするが、やはり分からない。
あかねは、考えを頭の中で巡らせて黙ってしまう。
「だから、だから・・・」
そんなあかねのに対し、永泉は話を続けていた。
「あなたがいなければ、私はいないのです」
言葉が上手く言えない・・・
伝えたい想いが、沢山あるのに・・・
永泉の胸は、もどかしい気持ちが溢れそうになっていた。
「・・・永泉さん」
その時あかねが、永泉に語りかけた。
「何となくだけど、分かります」
「・・・・・」
「私も・・・私も永泉さんがいないと駄目だと思うから」
あかねは、永泉に想いを返した。
「神子・・・」
相反していて、けれど互いがなければ存在が消えそうなもの。
永泉は、そう考えていた・・・
「このままずっと、私と共にいて下さい・・・愛しい神子」
陰陽の中で生きる、二つの魂。
それは、あかねと永泉・・・その二人なのである。
【完】
書いていて、自分でも何が言いたいか分からなくなって来そうでした。
でも、相反するものって本当に沢山ありますよね(050328)