39. 扇 −涙を隠して−




大粒の涙が、頬を伝う。


「何故、泣いているのかい?」


友雅が尋ねても、あかねの瞳からは涙が零れる。
なんど衣の袖で拭っても、また・・・ぽつりと落ちてゆく。


「友雅さん・・・」


潤んだ瞳で、友雅を見上げた。


「あかね」


友雅は、あかねを抱く腕の力をより強くした。


「悲しい事があるなら、私に話すといいよ」


そっと、優しく、あかねに微笑みかける。


「・・・・・」


あかねは、黙ったまま泣き続ける。


「・・・おや?」


その時・・・友雅の耳に、誰かが近づく小さな足音が聞こえた。
その足音の主は、だんだんと近づいてくる。


「失礼致します」


そう言って、足音の主・・・女房が御簾をくぐる。
すると友雅は、すばやく扇を開いた。
そして、その扇であかねの顔を覆い隠した。


「姫君の涙は、私だけのものだからね」


そう言って、暖かい視線であかねを見つめた。


【完】






女房さん・・・忘れられてます。まあ、いいんですこれで!!(おい;;
それにしても、神子殿は何故泣いているのでしょうか???(050923)
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